神奈川こどもレジ室

神奈川県立こども医療センターの後期研修医(ジュニアレジデント)のブログです

後期研修の紹介

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今日は神奈川県立こども医療センターでの実際の後期研修の様子を紹介をしたいと思います。

見学生や、レジナビにきてくれた方にお見せしている病院紹介スライドをweb公開用にアレンジしたものです。

このような時期なので、Webで情報をどんどん発信していければと思います。

 

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本日の紹介内容です。

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当院は内科系診療科(総合診療科、内分泌科、感染免疫科、アレルギー科、循環器科神経内科、血液腫瘍科、救急集中治療科、遺伝科、新生児科)と外科系診療科(小児外科、心臓血管外科、脳神経外科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科泌尿器科、歯科口腔外科、形成外科、産科)その他(麻酔科、放射線、病理科、児童思春期精神科など)から構成される小児専門の総合病院です。

いわれる希少疾患とされるものも含め、何らかの基礎疾患を抱えた患者さんや、2次病院から搬送されてくる重症例を多く診療していることが特徴です。

 

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立地は横浜市の中心から車で20分ほどの小高い丘の上(森の中?)にあります。

最寄りはJR東戸塚駅か、京急弘明寺駅で両方からこども医療センター行のバスが出ておりバスで10分ほどです。

病院自体は少し不便なところにありますが、アクセスはよく、休日はみなとみらい方面や、鎌倉方面などへも30分圏内でいけます。

 

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後期研修医は各学年に5人ずつ、計15人います。

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みんなそれぞれに出身地、研修地などは別々で、日本全国、いや世界中(言い過ぎ)から集まってきています。というのも、たまたま二学年連続でハンガリーの大学出身の研修医がいただけです。

 

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後期研修は3年のプログラムです。

前半の2年は決められた科を10週間ずつローテートします。残り1年間は内科・外科問わず、院内全ての科から選択し自由にローテートすることができます。小児総合病院のメリットを最大限に活かし、心臓血管外科から皮膚科に至るまで小児に関わる全ての外科系診療科、小児を専門とした麻酔科、放射線科、児童思春期精神科など、他の小児科研修では決してローテートできない科で経験を積むことが出来ます。幅広い経験と知識が、小児科医としての分厚い基盤となります。卒業後、どこに行っても困らない小児科医に育てるのが当院の研修の目標です。

 

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ローテーションの1例です。二年目にローテートする済生会横浜市南部病院は小児の二次救急指定病院であり、一般小児の研修もできます。

 

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3年目の自由選択期間です。小児科専門医取得後の専門領域を決めている場合はB君のようにその領域に特化した気合の入った研修を行うことが可能です。

Aさんのように専門領域をまだ決め切れていない人も、幅広く様々な科で研修を行うことができ、その後にどんな科を専門にしたとしても糧になる知識が得られます。

 

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当院は専門性の高い病院であるが故に受診患者さんの層も一般市中病院とはかなり異なります。

2次病院では診断のつかなかった症例や重症症例などが、搬送された後にどのように診断、治療されていくのかを経験することができます。

将来自分がどのような病院で働くことになったとしても、自分が紹介した患者がその先どうなるのかを知ることは貴重な経験になります。

 

また各学年5人と少人数のため、各科をローテートする研修医は基本的に1人です。そのため症例をとりあうこともなく、各科の指導医からも直接的に指導をしていただけます。また、各科に専門研修にきている先生方もおり、学年が近い分質問もしやすく、研修への姿勢も学ぶことができます。自分が将来専門とする科を選ぶ場合のロールモデルにもなります。


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2年目に研修にいく済生会横浜市南部病院では、肺炎、喘息、尿路感染、熱性けいれん、低月例発熱、川崎病、腸重積の整復、一か月健診、予防接種など一般市中でみる症例を数多く経験することができます。また、毎週木曜日の外来を担当させてもらい、定期フォローをおこなったり、近医のクリニックからの紹介症例の初診を担当したりします。救急車の受け入れ台数もかなり多く、救急当番の日は多くの症例を担当できます。夜間当直では1次~2次の小児救急を経験でき、自分で考え、判断する力が身に付きます。指導体制も整っており非常に勉強になる10週間です。

 

手技に関しては、挿管やCV確保など、手技を取り合う相手が少ないため数多く経験できます。ただ見たことがあるのと、実際に自分が経験するのでは天と地ほどの差があり、実際に体を動かして経験できることが多いのが当院の特徴です。

 

ここからは実際に各科でどのような研修を送っているかの紹介です。

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まずは1年目にローテートする総合診療科です。

朝は7:30頃に出勤して入院患者が夜間にかわりなかったかカルテ回診します。

7:50頃にハイケア病棟当直からの申し送りのあと、上級医と入院患者のベッドサイド回診をおこないます。一通り回診が終わったら治療方針など予定を確認して一旦解散します。

入院患者は全体で20人前後おり、そのうち5-10人ほどを受け持ちとして担当します。

9:00頃から採血や処置、入院対応などをおこない、検査結果がでたら点滴や内服、栄養UPなど指示出しをおこないます。

一通り終わったら、指導医の田上Dr.から後期研修医に向けたミニレクチャーをしていただきます。輸液、栄養、anorexia、頭痛、abuseの対応などの日々の研修に役立つ講義です。

午後からは、近所の開業医のクリニックからの紹介や、かかりつけ患者さんの発熱などの救急外来対応をおこないます。転院搬送の依頼などがあれば対応します。

その合間に、入院患者さんの在宅へ向けた蘇生指導や在宅人工呼吸器の導入、回路交換、カニュウレ交換の指導、他科からの併診依頼への対応などを行います。

院内では、困ったら総合診療科というほど、他科から様々な併診依頼がくるのでまさに総合的に患者さんに関わります。

17時ころから上級医と再度ベッドサイド回診をおこない、最後に入院患者さん全員のショートプレゼンによる方針確認をおこなって解散です。

夕に緊急入院などがなければ18時半頃に帰宅します。

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次は2年目で回る忙しい科の代表、循環器科の1日です。

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毎朝7:45からICUのベッドサイドでの申し送りからはじまります。

ここで、前日にOPEをした患者さんの朝の心エコーの状態をプレゼンしないといけないので、担当患者が前日OPEをしている場合は7:45までに心エコーを済ませておきます。

また、NICUなどに状態の変化が激しい患者さんを担当している場合は朝のうちに様子を確認しにいっておきます。

ICU申し送りが終わると、カンファレンス室に移動して、心臓外科と合同で入院患者全員のショートプレゼンをする朝カンファをおこないます。

ここで、気になる患者さんは治療方針を相談します。

毎週金曜は、NICU回診があり新規に出生した児のエコー所見、既存の入院患者の治療方針などをプレゼンし新生児科のDr.と治療方針を確認します。

それが終わると、入院患者の採血、処置、指示出しなどをおこないます。

 

カテーテル検査/治療を月・水・金におこなっており、週に2~3件担当になります。

前日に入院となるので、術前検査を一通りおこないます。上級医と心エコーをあて、カテ前プレゼン用のエコー動画を撮るのですが、まさに手取り足取りエコーの基本を教えていただけ、日に日に上達していきます(個人差はある笑)

カテーテル検査は、診断カテーテルは穿刺から圧測定、造影まで一連の検査を上級医の指導のもとおこないます。

金曜日は治療カテなのでASDのデバイス閉鎖や血管拡張などもみることができます。

 

午後からは、新患外来に心雑音などで紹介されてきた初診患者さんの心エコーをあてたり、NICUで先天性心疾患の患者さんの出生があれば立ち合い、出生後エコー評価などを上級医とおこないます。

担当患者の手術があれば、術中/術後心エコーにもいきます。

時間があまれば心エコーレポート、カテーテル検査レポートを作成します。

 

カンファレンスは月、火、木は内科カンファレンスで、カテ前、カテ後の患者のプレゼンをおこないます。

火は心臓外科とのカンファレンスで、手術が必要な症例の提示をおこないます。

 外科の先生たちの前で、病歴、カテ結果の説明、エコー動画の提示、なぜ手術が必要なのか、どういう手術をしてほしいのかを簡潔にプレゼンしないといけないのですが、最初の頃はかなり緊張します。

 

それらが終わって、ちょっと調べものなどをして、だいたい帰宅するのは19時から20時前後です。

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 循環器科では、心エコーやカテーテル検査の手技だけでなく、先天性心疾患の出生前から出生後、その先の手術、退院まで一連の流れを経験することができます。

上級医や、循環器の専門研修中の先生たちにサポートしてもらいながら濃厚な研修ができる科です。

県内でも心臓手術をおこなっている数少ない病院の一つなので症例はかなり豊富に集まってきます。

 

最後はアレルギー科の1日です。

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8:15頃に出勤して入院患者がいればカルテ回診をおこない夜間の状態をチェック。

8:30から、朝カンファレンス。入院患者のショートプレゼンをおこない治療方針を確認します。入院は喘息、重症アトピー性皮膚炎の教育入院などがおもです。

 

水曜以外は経口食物負荷試験のday入院の対応をします。たまに運動負荷検査も。

入院で症状がでてもすぐに対応できるよう万全の体制を整えて、実際に負荷する食物を少量摂取してもらいます。その後一定の期間病棟で観察した後に、症状の誘発がなければ自宅での摂取継続の仕方を指導し退院します。

 

水は新患外来で、近医からの紹介患者(おもに食物アレルギー、アトピー性皮膚炎)の外来を担当します。患者を問診、診察する後ろで上級医が見守っていてくれて、その都度問診内容にフィードバックをもらえます。自分の外来をつきっきりで指導医がみてくれているこというのはあまり経験がなく、自分が今までないがしろにしていたことや誤った知識などを都度訂正してもらえ、非常に勉強になるとともに気づきの多い外来となります。

 

木は術前喘息外来を担当します。当院で手術をおこなう喘息をもった患児はほぼ全員この外来を受診します。全員に問診で今の喘息のコントロール状況を確認して、術前までの1か月と入院後手術当日の喘息の治療方針を考えます。これも後ろに上級医の先生がおり、問診後に一緒に治療方針を確認します。

 

毎週水曜は昼にカンファレンスをおこないます。抄読会、新患外来にきた患者のプレゼン、食物負荷試験で入院予定の患者に何をどれくらい負荷するか、などをみんなで確認します。

 

また、院内の採血室に採血のお手伝いに行き、ベテランNs.さんたちの指導を仰いだりと手技の向上もおこなっています。

 

アレルギー科では、小児科専門医に必須の論文作成に力を入れてくださっており、論文をもっていない場合は、研究テーマの提案から、症例集め、論文作成までを丁寧に指導いただけます。

 

働き方改革を推進している科でもあり、有給の消化や定時帰宅も可能です。

 

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これらは、ほんの一部ですが、その他の科は実際に見学にきたときに確認してくださいね。

このように短期間で次々と回る科がかわっていくローテート研修のメリット・デメリットです。

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どんな研修にも良いところ、悪いところがあります。

当院での研修内容、研修スタイルが自分にあっているかどうかは、何を目的に研修するか次第だと思います。

興味をもっていただけた方は是非一度見学にきてくださいね。

(コロナがいつ落ち着くかわからないので、見学可能になる日までwebでの発信も頑張ります。)

 

長くなってきたので今回はここまでにしようと思います。

次回はレジデント紹介、福利厚生、卒業後の進路などをお伝えできればと思います。